<ボキューズ・ドール国際料理コンクール2023>の本選が2023年1月にフランス リヨンで行われ、チームJAPANとして参加したシェフ石井友之をはじめ、日本のフランス料理界を代表する精鋭たちで構成されたチームが世界に挑んだ。
結果はメディアで報道されているように、24カ国中12位という世界の壁に阻まれたかのような順位で終わった。
「世界の壁というか、こういうコンテストで勝つために必要なことは何か、自分たちに足りなかったことはなんだったのかをはっきりと掴めたことは収穫です」。
単に料理の味や見た目だけでなく、キッチンの美しさや当日割り当てられる現地のコミ(アシスタント)への指示出しまでもが審査の対象となる。
「上位の国のチームは、三つ星クラスのシェフがきっちり勝てる料理を作り上げていて、それをコンテストの場で代表のシェフが再現するのに近いかもしれません。それだけ完全にチーム戦として出来上がっていました。
日本もチームで挑んだのですが、完全な形までは出来上がっていなかったことも敗因の一つかもしれません。もちろん、僕自身の力量の足りなさが最大の要因ではありますが…」。
シェフ石井からは悔しさも含め、それ以上に“次”に向かって動き出すという意志を感じた。
「リヨンに行ってからの数日で、世界の数多くのシェフたちと直接話ができ、彼らが目指している本当の意味での“世界”とは何かを学んだ気がします。
やはり日本の中だけで考えていてはダメで、もっと視野を広げていかなければ、世界的というレベルには達しないかな」。
そんな中でも印象に残ったのは、やはり北欧の料理たちだったようだ。
「とにかく、余計なものは足さない。シンプルに素材の良さを引き出すことに徹していて、“考えさせる料理を作っちゃダメ”ということも、自分のこれからの料理に対する姿勢の一つになっていくかもしれません」。
子供審査員による、子供が選んだ一番大好きなプレート賞を受賞したことは、今回一つの成果となった。
「そうですね、特別賞という形で子供たちが応援してくれたことも今回の一つの嬉しい結果でした」。
そしてこれからのシェフ石井が目指す道について聞いてみた。
「もっともっと世界を知って、もう一つ上のレベルでの仕事ができるようになること。この経験をスタートラインとして考えます。
日本では料理人としてある程度の位置にいて頑張っていると思っていましたが、まだまだレベルが違うことも実感しましたし、これから自分の料理をスタイルも含めて追求していきます」。
多くの支援者と共に挑戦した今回のボキューズ・ドール。その結果以上の学びを得たシェフ石井友之。これからの彼の進化を見届けていきたいと思う。
※撮影の演出上、手袋やマスクは外しております。
TEXT:Y.Nag
PHOTO:Taisuke Yoshida