7月末の深夜、フランス・リヨンのボキューズ・ドール選考委員会より、「ボキューズ・ドール アジア・パシフィック大会2022」の選考結果が発表され、アジア・パシフィックを代表する5か国に日本チームが選出された。
この結果、日本代表として出場していた石井友之は、アジア・パシフィック代表として来年2023年1月22日、23日にフランス・リヨンで開催される「ボキューズ・ドール2023 フランス本選」へ出場することが決定した。
本選に向けチームJAPANとしてより強固な体制作りも急務だ。そのため、彼らが集結し本番さながらの練習を重ねることができる、テストキッチンが完成した。
浅草エリアの一角に設けられた秘密基地のようなキッチン。本選会場のセットとほぼ同寸に造られ、無駄なく完璧な動作を現地でも行えるように訓練を重ねるのだ。
さらにここに備えられた機材の数々も本選で使われるものとほぼ同じ。キッチンをどう使いこなすかも審査の重要なポイントなだけに、ここでの練習は本選さながらに行われなければならない。
「もちろん料理が主ですが、どうキッチンを使いこなすか。そこでの動き全てが審査対象だと思って練習をしています。その点は、ヨーロッパ大会を視察した時に各チームの動きやキッチンの使い方なども参考にしています」。
ボキューズ・ドールが料理人たちのオリンピックと称されるのも、その全ての完成度を競い合うからに他ならない。
シェフ石井と共に本選に参加し、サポート役となるのが“コミ”と呼ばれるアシスタントだ。
コミは大会ルールとして23歳以下と決まっている。全国のひらまつレストランの応募者の中から、コミのための審査会を経て選ばれたのが、林大聖と清水響の2名。
「とにかく審査会は最初緊張しました。でも始まるとむしろ楽しくなって(笑)。それがよかったのかもしれません」。
入社4年目の林は余裕を見せる。
一方、清水は入社まだ2年目で新人に近い。
「学生時代からコンクールには挑戦してきました。フランスに行こうと思っていたのですが、コロナ禍で行けなかったところ、ボキューズ・ドールのコミのことを知って、これだ!と応募しました」
と、こちらも余裕を持った態度が頼もしい。
「3人でチームとしての役割分担をはじめ、スピードとか動きの滑らかさなどを何度もシミュレーションして完璧な調理を目指すのです」
リーダーの石井のパワーも以前にも増して上がっている。
「みんなにも髪を伸ばして侍スタイルにしてもらおうかな」
そんな冗談が石井から飛び出すほどの和やかさも持ち合わせている。
「ここにある機材も、本選同様のスペックのものを揃え、完璧に使いこなせるように訓練します。まだ本選の課題は発表されていませんが、チームJAPANとして何を訴えて、どう感動を与えようかという基本のアイデアは常に練り続けます。そのための材料や金型など必要なものは全て準備して、これ以上はないという万全な体制で臨めるように、ここで日々訓練するのみです」。
チームJAPANとして動き始めた石井たち。
若さ以上に、そこから湧き出るパワーのようなものを、この密かな秘密基地で醸成させていくことだろう。
※撮影の演出上、手袋やマスクは外しております。
TEXT : Y.Nag
PHOTO : M.Nagao