ひらまつの仕事と人
ひらまつを支える人たちの
チャレンジ
Chef
星野 晃彦
レストランのキッチンがデジタルの世界へと飛び出していく
しかしその本当の目的は、ブラッスリーらしさへの回帰かもしれない
東京銀座2丁目、瀟洒なビルの10階。華やかな街を見下ろす場所にブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座はある。ブラッスリーの名の通り、オープンキッチンの先頭に立つシェフが星野晃彦だ。グランメゾンでの修行、パリでの研鑽を経ての今。彼はなぜYouTubeという新しい試みを始めたのだろう。
「自分の経験からもあるのですが、修行時代に決して見せてもらえなかったシェフの手元という、つまり、プロの料理人はどうやって素材を料理という姿に新しい命を吹き込むかを見てもらいたかったんです」
シェフ星野のYouTube動画は調理やレシピの紹介を、プロの作業ほぼそのままに見せることが多いのは、その背景があるから。
「僕たち料理人が、厨房でどんなことをやっているのか。手品じゃない調理という技を見てもらいたい。実際にご自宅でそこを目指して作られる方もいますし、自分で作られた料理と、僕の料理を食べ比べに来てくださる方もいるのです」
YouTubeで見た料理を食べにくる
そんな人々が増えているという事実
その彼の思いは通じているのか、YouTubeを見て、実際に彼の料理を食べたいと訪れるお客様は絶えないと言う。
「ブラッスリーというスタイルなので、オープンキッチンというしつらえにしています。だからこそ、お客さまと調理場が近い感覚で食事を楽しんでいただける。そんなブラッスリーという場所を身近に感じていただきたいと思ったのも、YouTubeを始めたきっかけでもあります」
Epilogue
多くのシェフがYouTube動画アップするようになった今も、シェフ星野は変わらずプロの手捌き、料理の技を公開し続けている。そんな彼が目指すレストランはシンプルにふと思い立ってでも食べに出かけたくなる。そんなブラッスリーというフレーズが本来持つ軽快な感覚のフレンチを楽しめる場所なのだろう。本物のポール・ボキューズのフランス料理を日常に。YouTube動画の先にあるのはそんなプロフェッショナルなクオリティをさりげなく背景に置いた、レストランと食べる人との新しくも当たり前の関係かもしれない。
TEXT: Y.Nag
PHOTO: M.Nagao
Soupe de Légumes de Saison BRASSERIE PAUL BOCUSE
ポール・ボキューズ伝承の“soupe à l’oignon gratinéオニオングラタンスープ”。これだけでもリヨン発祥のボキューズイズムを感じることができると思う。
Spécialité Lyonnaise,
Saucisson Chaud Pistaché en Brioche
Terrine de Canard Campagne
リヨンのスペシャリテ
ピスタチオ入りソーセージのブリオッシュ
鴨のテリーヌ カンパーニュ風
About the Chef
星野 晃彦
Teruhiko Hoshino
1984年・群馬県生まれ。専門学校を卒業後、株式会社ひらまつへ。
【シンポジオン】、【レストランひらまつ 広尾】、フランス【レストランひらまつ パリ】で研鑽。金沢【ジャルダン ポール・ボキューズ】で活躍した後、【ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座】シェフに着任。伝統とモダンをコンセプトに正統的なフランス料理をモダナイズ。ブラッセリーらしさをリアルに感じられる料理を目指している。