Team Hiramatsuひらまつの仕事と人

ひらまつを支える人たちの
チャレンジ

Chef

窪津 朋生

どこまでもローカルにこだわることで見えてくる、窪津流
自らの料理を“イタリアン技法の九州料理”と呼ぶ
この地、福岡に通う大きな理由となるレストランになる

福岡天神地区の一等地にあるリストランテKubotsuはその名の通りシェフ窪津朋生が自身の世界観を表現し尽くしているかのようだ。
「この店を任されるまで、代官山の名店リストランテASOでみっちりと修行をしていました。そこから青春時代を過ごした福岡に戻ってきて、ASOをこの地で立ち上げ、2018年の冬からは自分の名前をつけたレストランに形を変え徐々にオリジナルスタイルを確立してきています」

そのシェフの言葉通り、窪津流と言っても良い独特の美学に裏付けられた料理の数々は、地元での人気も高く昼時から多くの顧客の姿が見られる。
「とにかく九州は食材の宝庫と言われています。だから自分の足で九州中を回って、自分の目で選び抜いた食材を徹底的に研究し料理を組み立てます」その言葉通り、その日結婚式用に送られてきた見事な鯛は鹿児島の鮮魚店からの直送だという。

「市場を通していたのでは希望通りの食材が手に入らなかったり、時間がかかったりするのがもったいない。だから、農家や漁師の方などから直接仕入れを行います」

九州を五感を駆使して食べ尽くす
そんな感覚のイタリアンがあってもいい

シェフ窪津の九州へのこだわりは食材に始まり、さらに使われるお皿にまでも及ぶ。
「このバターを入れてお出しする小さな器は、僕自身がデザインして、唐津の陶芸家・矢野直人さんと共同で作り上げたものです。蕎麦猪口をイメージしながら、蓋の部分にバターに加える薬味を添えることができ、その薬味でも季節を感じてもらえるという仕掛けを考えました」
この唐津焼だけでなく、窯元に足繁く通い揃えられた器、皿が九州食材を一段と引き立てるということだ。
「九州は食の宝庫であると同時に陶器の宝庫でもあって、若い作家の方から大御所まで様々な陶芸家とお話をして、そこからのインスピレーションが広がることも多いのです。その意味でもオール九州のレストランと言えるかもしれませんね(笑)」

Epilogue


九州エリアの旬の食材を存分に駆使し、ここでしか味わうことのできない窪津流とも言えるイタリアン九州料理。地元の方々はもちろん、旅先に福岡を選んだならぜひトライして欲しいと言える料理がここにある。美味しいを超えた先の感情までも見据え、シェフという職業人がたどり着いた(いやまだ進化するだろうが)、地方に根付くレストランの一つの完成形かもしれない。

TEXT: Y.Nag
PHOTO: S.Noguchi

Sgombro del Canale di Bungo con rape del signor Morimitsu
豊後水道の釣り鯖と森光さんの蕪
鯖と蕪だけのシンプルな食材が醸し出す最高のハーモニー。瞬間スモークの香りが食欲を引き出してくれる。

Gamberetti satsuma amaebi e bottarga
del signor Masumoto con spaghetti
ai broccoli del signor Tanaka

さつま甘海老と増本さんのからすみ
田中さんのブロッコリーのスパゲティー
イタリアンの白眉とも言えるパスタ料理も地の野菜の力強さが素晴らしい。
パスタはグラスで提供され、お客様自身が仕上げるというオリジナル溢れるプレゼンテーションも楽しい。

キッチンでの窪津シェフはまるでオーケストラの指揮者のようだ。それぞれのスタッフが見事なハーモニーを奏でながら料理が完成されていく。

About the Chef

窪津 朋生
Tomoki Kubotsu

1983年生まれ。福岡県出身。2003年(株)ひらまつ入社。
東京・代官山「リストランテASO」配属、2009年には副料理長に就任。
2011年、「リストランテASO 天神」オープンに伴い異動。
2014年料理長に就任。2018年1月、自身の名を冠する新店「リストランテKubotsu」料理長に就任。