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過去日本の最高位は3位。それ以上を目指す。
そのため意気込み以上に大切なこととは
1987年に始まった「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」 は来年2023年に第19回を迎える。国内予選を勝ち抜いた、アルジェントの若きシェフ石井友之はこの世界最高峰の料理コンクールへの挑戦に、今、全身全霊で向かっている。
このコンクールの凄さは、すべての料理人が目指すというだけではない。例えば今年発表された<世界ベストレストラン50>で1位となったコペンハーゲンのレストランGERANIUMのシェフ、ラスムス・コフォード氏は2011年のボキューズ・ドールの優勝者だ。それほど、このコンクールの持つ意味は大きい。
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「とにかく、自分のすべてをこのコンクールに向けて集中すること。それはボキューズ・ドールに挑戦しようと考えた時からずっと変わらず続いています」。
<第16回ボキューズ・ドール国際料理コンクール>日本代表を務めた長谷川幸太シェフに憧れ、コンクールへの挑戦を決めてからというもの、石井は過去の優勝者や入賞した料理を調べあげ、コンクールの傾向から、なぜ今まで日本は優勝できなかったのか、までを徹底的に分析したという。
「ひらまつに入社してから一時パティシエとしても経験を積みました。パティシエ修行を行うなかで、繊細かつ微小に作ることや、意外性のある食材の組み合わせの発見など、他にはない自分の強みというものを持てるようになったと思います」。
あくまでフランス料理のコンクールだが、そこに石井は<和の要素=日本発>でなければできない技をも持ち込もうとしている。
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「例えば調理工程で使用する”型”ですが、日本の小さな工場で世界的にも比類のない型を作ることができる所があります。そういった日本の高い技術に後押しされながら、自分自身も単なる東洋人と見られない、石井という人間を際立たせることを目指したいと思っています」。
アジアパシフィック予選通過
アイデンティティを活かしきる
アジア予選に提出した<Team Japan>ムービー
そして、ボキューズ・ドール本選へのもう一つの大きな関門であるアジアパシフィック予選がつい先日行われた。そしてその結果、石井が代表となるチームジャパンは見事予選を通過。本選への切符を手にすることができた。
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<ボキューズ・ドール>アジア予選に提出したプレートのアイデアスケッチ
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<ボキューズ・ドール> アジア予選に提出したプレート
しかしこれが一筋縄ではいかないものだった。
今回のテーマは“豆腐”。世界的なプラントベースへのシフトを受けてのことか、アジアでも様々な解釈がされる豆腐が題材となっただけでなく、今回は料理写真とレシピの提案、さらにチームのPR映像のみで審査されることになったという。見た目やインパクト、レシピのユニークさなどなど、これまでにない審査にどう立ち向かうかが、チームジャパンの大きな課題となった。
そのため、石井たちは豆腐作りに欠かせない大豆やにがりの選定からはじめ、独自の感性を集約して見事地区大会を勝ち抜いたのだ。
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ただそれはほんの序章に過ぎないだろう。いよいよ本選のテーマが発表される11月を目指して、チームジャパンとしてのトレーニングの日々は続いていく。本選と同じスケールで作られたテストキッチンも完成し、コミ(アシスタント)と共に万全の体制づくりへと向かっていくのだ。
※撮影の演出上、手袋やマスクは外しております。
TEXT : Y.Nag
PHOTO : M. Nagao
About the Chef
石井友之
Tomoyuki Ishii
ひらまつグループのフランス料理店の一つ<アルジェント>のスーシェフを務める。叔父に憧れ料理の世界に飛び込み13年間、株式会社ひらまつで研鑽を積む。素晴らしい先輩や頼もしい後輩の刺激を受け32歳で<ボキューズ・ドール国際料理コンクール>に初挑戦。
ボキューズ・ドールJAPAN事務局
http://www.bocusedorjapon.jp
SIRH/+ BOCUSE O’DOR(フランス語・英語)
https://www.bocusedor.com/fr
SIRH/+ BOCUSE O’DOR Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/BocuseOr/videos